クロロと昔の恋人
マチと壊れたワンピース
フィンクスと誘拐男
ヒソカとウイスキー
シャルナークとシズクと変態男



昔別れた恋人と偶然に出会った。彼が片手をあげておうと挨拶する姿はあの時から何も変わっていなくって不覚にも懐かしく感じてしまった。「元気だったか?」「うん。」「今何してんの?」「奴隷にされてしまった。」「相変わらずタイヘンな人生送ってんだね。」俺はついていけねぇやと彼ははははと笑った。この男は昔働いていた店の店長でしかも妻子持ちだったのだが、なかなか長い間付き合いだった。ちなみにこの人とは、当時私に好意を持っていた、なんとかという、無駄に長くて綺麗な黒髪を持つ男に誘拐され二週間の監禁生活を終えて戻って来たらなんか終わっていた。だけど年の割りに若々しくて格好よいから今も何人もの彼女がいるんだろうなぁ。「また暇が会ったら遊ぼうなー。じゃあな。」男は爽やかに白い歯を見せて笑い、ついでに携帯の電話番号のメモを渡し、私の横を早足で通り過ぎた。その先には綺麗な女の人がいて男はおう待たせたなと、先ほどと寸分違わぬ動きで手をあげた。あの歳で語尾を伸ばして可愛いと思える男を私は彼以外に知らない。「誰だ。」いつの間にかに本屋へ消えていたクロロがこれまたいつの間にかに私の横へいた。「昔仲良かった人、誰だったかな。」首を傾げてみせるとクロロは溜め息を吐いた後、さっき貰ったメモを私の手から奪うと、「必要ないだろう。」至極当然といった顔でビリビリと破った。奴隷に人権は無いのかしら。あの人と、今度は一夜限りの恋人になりたかったのに。またあの色の黒い逞しい腕に抱かれて、それで汗の匂いの染み込んだ体にめちゃくちゃにキスをしたかったのに。しかし風に舞う紙切れは綺麗だった。クロロと昔の恋人





「マチ、ちゃん。」マチちゃんは私がここで働くようになって一ヶ月くらいした頃に言ったのだ、私のことは呼び捨てでいいから。当時名前がなかなか覚えられなかったことも手伝って団員のみなさんをご主人様とか呼んでいたせいなのか、後で聞いたら単純に敬称に慣れていなかったそうだ。だけど、私は呼び捨てだとおこがましい感じがするので、マチちゃんと呼んでいる。そうするとマチちゃんは、昔は盛大にいやな顔を、しばらくして眉をぴくりとさせるだけになって、今はもう慣れちゃったのか何もないのが、私は寂しい。マチちゃんのあの、嫌そうな視線で見つめられると、子宮がきゅんきゅんしちゃうのだ。その辺はヒソカさんと話が合う、と思う。「なに?」マチちゃんはいつもの凛々しいお顔と声で答えた、私はめろめろになる、胸が思わずきゅーんとなって、少女漫画チックだ。トリップしている私の頬をマチちゃんが叩いた。「マチちゃん」「だから何」「これ、壊れたの。」こないだシャル買って貰ったワンピースの、裾に付いていたひらひらがとれちゃったの。「それで」「直して」「・・・・はぁ。あんたって子は。」マチちゃんは呆れた顔で私からワンピー スを受け取るときびきびと、指を動かし始めた。「なんでとれたの。」「わかんなーい。」「・・・あっそ」マチちゃんは本格的に疲れたみたい、私はその横へ丸くなって熱燗をちびちび飲んで、仕上がりを待つ。お礼に特製のシチューを作ってあげようかなぁ、寒くなってきた季節に、熱燗が美味しくていいよ、うふふふと思わず笑ったら酒臭いと言われてしまった!マチと壊れたワンピース





私がその男とあったのは全くの偶然で、この思いもかけない再会に世界は狭いのだなぁとなんとなく分かった気がした。現在真正面にあるさらさらの黒髪と、感情の滅多に顕れない瞳を持っているこの男は、間違いなく、だってあんなに果てしなく強烈な出会いをした彼を忘れる訳ないもの。だけど例によって名前はことごとく記憶から脱走しているので、声をかけるのもままならないのに、この男に監禁されていた時の異常な体験への興奮が、ちろちろ燃え上がってどきどきしている。とりあえず考えついたビールを持った片手を上げて挨拶を、する暇も与えない速さで、男は私の体を腕に抱く、そのスピードに耐えられずビール缶が手のひらからすり抜けていくのを、泡が宙を舞う瞬間さえも、しっかり目に焼き付けた。あぁ、さよなら、私の最愛の人、散りゆく茶色の液体に心の中で別れを告げた。男は私を狭くて暗くて人目のない、まさに犯罪を行うのに最適な路地へ運んだ、「久しぶり。」なんだか喋っている声が、のそりと耳の付近まで来るのに、アルコールが切れてるから、だめ、わかんないわ。そのままくたりと地面へ萎れる、さけさけさけさけ、考えられることも喋ることもそれだけ、さけさけさけ、アルコールを胃へ、男はそんな私へ一瞥くれると魔法みたいに、消えてしまった。え、放置プレイ?嫌いじゃないけど、お酒、とりあえずお酒、あぁ、お酒がないと、無理だわぁ。もしかしたらこれは焦らしプレイ?どっちでも愉快、なんだけど、ビルの間から差し込む陽が痛いよ、溶けちゃうよこのまま、早くアルコールで固めないと、戻らなく、なる、のに。その時不意に耳のそばで足音が聞こえた。目を開ければ、やくざが呆れたような顔のフィンクスさんがいて、何やってんだお前、と私の体を肩に乗せて、さっさっと歩き始める。「さ、」「さ?」「さ、け、」「はぁ!?」その後フィンクスさんはこのアル中がなどと悪態を吐きながらもビールを瓶でくれた、のでフィンクスさんをちょっと、好きになった。
路地裏にたくさんのビール缶の入った箱を抱えて戻ったイルミは、また逃げられたとぼんやり思った。フィンクスと誘拐男





君はさぁ、逃げないの?とヒソカさんはのたまわれた。意味が分からないのですが。首を曲げると彼はさらに続ける、私はお気に入りのウイスキーをクロロさんがくれたなんとかというブランドの高級なアイスを摘みながら飲んでいるのですごく幸せ。「だって君外出自由だし特に見張られてるわけでもないんでしょ★」「はい、楽しいですよ。」「さっきからへらへらしてるしね◆」「うひひうふふひひ、」私はそのまま楽しくて仕様がなくてくるくるまわって、跳ねて、飛んで、全部楽しい!ヒソカとウイスキー





「昔、あるいかがわしいお店で働いてたときに、処女がだぁい好きな変態男とあったの。彼は私が処女だと思って指名したらしくて、真実を知ってとてもがっかりしていたわ。」
彼女は缶ビールを一口飲むと、喉がこくりと音をたてた。それが酷く色っぽくて、そんな彼女の一挙一動で欲情してしまっている自分に思わず苦笑いをする。それで、俺の隣にちょこんと座っているシズクが急かす。
「それでも男は私を抱いた。その次の日も次の日も、そのまた次の日もずうっと。処女が好きな変態野郎のくせによ。それでわたし不思議に思って聞いたの。どうしてって私を抱くの?私処女じゃないよ、知ってると思うけど・そしたら男は言ったわ、お前が記憶喪失だからだって。意味分かんなかったからまた聞いた。男は小さく笑って言った、お前は抱いた次の日にはまた処女に戻ってるんだお前が汚れも何も知らない顔に不似合いな薄いワンピース着て店で笑ってるから毎回買ってしまうんだ、って。意味分かんないよね。」
「うん、全然分かんない」
シズクが頷いたのを見て、共感を得られたは満足そうに微笑んだ。俺は何となくその(が言うところの)変態野郎の気持ちが分かったけど黙って笑っていた。だってこれは男にしか、しかもを抱いたことのある男にしか分からないから。中身とは裏腹にどこか幼さの残る顔立ちにまっさらな瞳で、今にもどこかへ溶けていきそうな儚さに似た危うさを持っていて、女学生のアンビバレンスを持つ彼女は、一般人とは違った、しかも俺たちとも同じではない空間の異なった時間の流れ中で生きているようだ。まるで一日の終わりに死を迎え、一日の始まりに再び生を迎えるような、彼女は永遠の少女なのだ。
「シャルは分かるの?」
「はは、俺も分かんないや。」
そう答えながら、目の前の、きょとんとした顔でビールを啜るの柔らかな体がどうしてか無性に欲しくなった。シャルナークとシズクと変態男





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