「おにいちゃん、いいにおい、」ベッドの上で、イルミの首筋に顔を埋めたがうっとりと呟いた。体温のない冷たいゾンビの吐息が耳を掠め、イルミの背筋をゾクゾクとしたものが走る。柔らかな太ももはイルミの腰をしっかりと掴み、青白い腕は彼の厚い胸板を力いっぱい抱きしめていた。「今日は鬼ごっこしないの。」「おにご、こ?しない、よ。」イルミの問いに蕩けた声が答える。「今日のおにいちゃん、すごく、いいにおい、」「なんで、」とろーんとした瞳をは兄へ向ける。「匂い?」はて、とイルミは首をかしげる。「特に何もつけてないんだけど。」自分で匂いを嗅いでみても、特に何も感じられない。「んー、」は自分の頬をイルミの鎖骨へぴたぴたと当てる。「んー、んっ、」「いいにおい、」「良い匂いはいいんだけど。」ぴったりと密着した妹を眺めていると、どういうわけかいけない気持ちになってくる。ここは自室で誰もいないし。妹の陶器のような背中を指で撫で上げる。「ん、」先ほどよりも幾分甘い声が彼女からこぼれる。「おにい、ちゃん?」少しだけ戸惑いを含んだ瞳がイルミを見上げた。「今日は赤なんだね。」頬をイルミの長い指が滑る。イルミを眺めるの瞳は夕焼けを閉じ込めたような赤い瞳であった。ゾンビの妹は瞳などの体のパーツを入れ替えることが出来るのだ。そんなをイルミの猫のように大きな瞳が捉えた。そのまま、薄い唇へ唇が重ねられる。においのせいか、いつもよりもとろとろしたの口内がイルミを受け入れる。熱を感じさせない舌を吸って、絡ませる。唇の端からだらしなく零れる唾液。妹の肩に手を当てると、あっけなく後ろへ倒れた。体温もないのに顔を赤くするに跨ると、イルミはゆっくりとシャツのボタンを外していく。「おに、ちゃ、」「やめとく?」開かれたシャツからのぞく白い肌に手を這わせる。内臓を取り出すための大きな傷跡が指へまとわりつく。「や、めない、」耳まで赤く染めて、期待と羞恥の混じった目を妹は逸らした。可愛い、などとは思わない。思っていることを認めたらイルミはこの関係が崩れてしまう気がした。払拭するようにイルミは乱暴に口づける。ついでに空洞の腹に撫で上げれば、甘い声が部屋に響いた。中身はどうなっているのだろうか。頼めば、妹はいつでも腹を裂いて中身を見せてくれるだろう。それさえも可愛らしいような気がしてイルミは眩暈がした。近くに感じる妹からは冷気と微かに甘い香りがする。どこかでかいだような、淫靡な。太ももと臀部の繋ぎ目に手を添える。文字通りの繋ぎ目のあるの肩がびくりと震える。いつもより妹の反応が敏感な気がする。「・・・久しぶりだね。」自分がしばらくの間仕事で帰っていなかったことを思い出して、イルミは呟く。「さみしかった。」が首にぎゅうと抱きつく。「ごめんね。」感情の伴わない謝罪と共に甘い口づけが落ちてくる。その響きについてには考える間もなく、その行為を享受することにいっぱいになってしまう。浅くなる呼吸。「でも、おにいちゃんは一番に、私のこと、来てくれたから、」途切れ途切れに妹は言葉を紡ぐと、今度は自分から唇を重ね舌を絡めた。首へ回される柔らかな腕。仕事の際によく感じる体温に、イルミは自分に付き纏うにおい、がいいにおいと喜ぶものの正体をゆっくりと理解していく。死体のにおいだ。がうっとりするにおい、そしてから香る甘い匂い。考えてはいけない。溢れ出る妹のにおいに包まれながら、イルミは思考を止めたのだった。


扉は開かれた

20150615
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送