窓から雨の音が聞こえる。冬の雨は憂鬱だ。夏の雨はわくわくするような、亜熱帯にいるような、高揚感があるというのに。この時期の雨は陰鬱で、音を聞いているだけで気持ちが塞ぎ込む。
「眠れないのかい?」
私の寝ているベッドのに腰を掛けて、本を読んでいた忍が私を見て微笑んだ。眉間に皺が寄っていたようで、指で伸ばされた。暖かい指先。忍は私よりも平熱が高い、きっと。
「寒くて、眠れない。雨だし、冬だし。」
それに足の先がちょっと寒いし、自分の体温で布団が暖められない。私は冷え性なのだ。忍を上目遣いで伺うと、読んでいた本にしおりを挟むと、近くの棚に置いた。優しい顔だ。忍はいつも私に優しい。恋愛とは違う、慈しみの感情。子供、ではない、赤ちゃん扱いな気もする。
「一緒に寝て欲しいのかな。」
意地悪な顔で、忍が私の頬に触れる。壊れ物を扱うように、繊細に扱うけど。もっと乱暴にしても壊れないよ。大きな手のひらが気持ち良い。このままずっと撫でられていたい。猫になった気分だ。
「是非そうして頂けると…。」 「俺は湯たんぽ代わりか。」
それは、樹に怒られそうだなあ、と笑うと、忍も笑った。忍には全てお見通しだ。羽毛布団をめくって忍がベッドに入ってきた。腕を伸ばして、大きな体にしがみつく。暖かい。嬉しくなって、頬に頬ずりすると私より分厚くて、それがまた嬉しい。ふふふ、と笑う。
「早く寝なさい。」

明日は早いのだから、と忍は頭を撫でる。はあい、と返事をする。忍の体温に包まれると、いつの間にかに寝てしまう。幸福な気持ちのまま、穏やかな忍の鼓動を感じて。この時間が永遠に続けばいいのに。なんて。

ごっこ遊び
20200404
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